百合好きによる百合好きのためのレビュー

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裏世界ピクニック

最近夜更かしがちょっと過ぎる感じの水城です。ごきげんよう。
このところやりたい事、やるべき事が多すぎて時間がかなり足りなくなっています。そのせいで書籍関連を読む時間がとれていない悲しみ・・・。いや、とろうと思えばもちろんとれるのだけどね? 「ウマ娘」がね、本当に楽しすぎてね・・・。

それはともかく今日は少し前に依頼されていた「裏世界ピクニック」の再レビューです。アニメの放送も終わったので小説もコミカライズ版も全て一から読み直しました。
そんなわけで最新まででの私の所感を記すので、未読・未視聴の方々は是非参考にしてくださいませ。

 アニメ

※この記事における評価は直感によるものであり、相対的なものではありません
※記事にネタバレを含む可能性があります

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 <作品概要>

・タイトル:裏世界ピクニック
・ 監督 :佐藤卓哉
・ 制作 :LIDENFILMS×FelixFilm

 <評価>

・ シナリオ :★★★★★★★★☆☆
・  構成  :★★★★★★★☆☆☆
・  脚本  :★★★★★★★★☆☆
・  世界観   :―
・  雰囲気   :★★★★★★★★★☆
・キャラクター:★★★★★★★★★★
・  作画  :★★★★★★★★★☆
・   ボイス  :★★★★★★★★★☆

・  総合  :★★★★★★★☆☆☆
・  オススメ度 :★★★★★★★☆☆☆

 <百合的注意点>

・百合度:中~
・男性キャラの登場頻度:中?
・  男性キャラの邪魔さ :―

 <感想など>

それではまずはアニメから。

先日放送したばかりのアニメ版ですが、私の個人的感想を言うと「ちょっと説明不足感が強かったかな」という感じでした。アニメ化でよくある走りすぎ感はあまりなかったのですが(1クールで小説三冊ならそこそこ尺は取ったと言えるでしょう)、やはりどうしても行動や、結果の意味がわからない部分が多かったように思います。どうしてもこの辺りアニメーションでやるのが難しいというのはわかるのですけどね。あまりにモノローグ入れすぎても冗長に見えてしまうでしょうし。ただもう少しなぁ・・・とは思いました。

構成については某所では米軍がしばらく放っておかれたことについての言及(批判?)を目にしました。そこそこ話数を挟んだせいで余計にでしょうね。あれについては「何故原作の構成を変えたのか」と言うこともできますが(それはまぁ言うまでもなくラストに米軍救出を持っていけば終わりが綺麗だからですが)、個人的には「いうて空魚と鳥子なら違和感ない」とも思いました。あとはアニオリがおよそ二話分かな?あったわけですが、あの辺りは結構いい感じでしたね。特に「巨頭」の最後は笑った(笑) どちらも原作者脚本なんですよね。原作に入れられなくて、けどやりたかったお話なのだと思います。

アニメに関しては全体的に「惜しい」と思います。ただ一点だけ非常に良かったのは、百合度をやけに高めてきたことでしょうか。単純にアニメーションになったことでも上がって見えていると思うのですが、それ以上に意識してそうしているようにも思いました。この辺りは賛否両論になるのでしょうが。私は好きです(素直)。逆にアニメーションにしたことで価値が下がった部分が、「怖さ」だと思います。「名前を付ける」に近しいところがあるのですが、ビジュアルイメージがついてしまったことで怖さはかなり減ってしまったと思います。これはアニメーションの出来云々とは別の話ですね。「恐怖」というのはこの作品における最重要キーワードなので、そこに対する楽しみが減少したのがアニメーションの一番のマイナスポイントかと思います。そのため基本的に「裏世界ピクニック」にアニメから入るのはあまりお勧めできません。一通り原作を読んで、それから補完的に視聴してもらうのが個人的にこちらの作品の一番の楽しみ方だと感じました。

漫画

※この記事における評価は直感によるものであり、相対的なものではありません
※二巻以降が発売されている場合、記事作成時点で読んだ全てを対象としています
※記事にネタバレを含む可能性があります

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 <作品概要>

・タイトル:裏世界ピクニック
・ 著者 :水野英多  原作:宮澤伊織
・  掲載誌 :ガンガンコミックス
・投稿時点での発行巻数:6巻(刊行中)

 <評価>

・ シナリオ :―
・  構成  :―
・   世界観  :―
・   雰囲気  :★★★★★★★★★☆
・キャラクター:★★★★★★★★★★
・    絵   :★★★★★★★★★★
・  読みやすさ :★★★★★★★★★☆

・  総合  :★★★★★★★★★★
・  オススメ度 :★★★★★★★★★☆

 <百合的注意点>

・百合度:~中
・男性キャラの登場頻度:中?
・  男性キャラの邪魔さ :―

 <感想など>

続けてコミカライズ版です。こちらは以前のレビュー記事の時も存在には触れていましたね。ご存知水野英多先生が作画担当の作品です。

こちらのコミカライズの素晴らしい所は、何といっても描写の上手さ、そして原作の取りこぼしが殆どない所だと思います。何がすごいって、この作品既に六冊も出ているのに原作の二巻すら終わっていないんですよ?ヤバくないですか? 丁寧にもほどがあるというくらい原作を忠実に表現しきっており、かつ違和感が全くない。どうしても情報量は多くなりがちですが、緩急は付けているし読みにくさも殆ど感じません。「スパイラル」も小説を漫画にしたような作品でしたからね。この辺りの腕前は本当にさすがの一言。反面、強いて言うなら原作を読んでいればそれでいいと言えてしまえなくもありません。

百合度に関しても、二次元となったことで上がっているように感じられます。ただしアニメ程露骨に攻めてきてる感じはなく、あくまで媒体が変わったことによる感じ方の変化ですね。またやはりイラストになることである程度「怖さ」は減ってしまっていると思います。ただしその点においてはアニメーションほどではありませんでした。個人的印象ですが、原作の怖さを10とした時、アニメは2-3くらい。漫画は6-7くらいでしょうか。こちらの方が幾分恐怖を楽しめると思います。

そんなわけで、アニメーションよりは導入にも向いた作品に仕上がっているのではないでしょうか。小説がそこまで得意ではない方は、ここから入るのも十分にありだと思うので、一考してみてください。そうそう、一つ重要なお勧めポイントとして、コミカライズ版には毎回巻末に原作者・宮澤伊織先生描き下ろしの短編小説が入っています。こちらは本編ストーリーの間を補完するような内容になっており、全部小桜さんです。良き。正直これだけにお金出してもいいかもと思える内容なので、そこもお楽しみに。

小説(原作)

※この記事における評価は直感によるものであり、相対的なものではありません
※二巻以降が発売されている場合、記事作成時点で読んだ全てを対象としています
※記事にネタバレを含む可能性があります

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 <作品概要>

・タイトル:裏世界ピクニック
・ 著者 :宮澤伊織
・イラスト:shirakaba
・投稿時点での発行巻数:6巻(刊行中)

 <評価>

・ シナリオ :★★★★★★★★★★
・  構成  :★★★★★★★★★☆
・   世界観  :★★★★★★★★★★
・   雰囲気  :★★★★★★★★★☆
・キャラクター:★★★★★★★★★★
・ テキスト :★★★★★★★★★☆
・    絵   :★★★★★★★★★☆
・  読みやすさ :★★★★★★★★★☆

・  総合  :★★★★★★★★★★
・  オススメ度 :★★★★★★★★★☆

 <百合的注意点>

・百合度:低→高
・男性キャラの登場頻度:低→中~高
・  男性キャラの邪魔さ :―

 <感想など>

そして最後に原作です。やはり個人的にこの作品は小説が一番楽しめる媒体だと思います。単純に宮澤伊織先生の上手さもあるのでしょうが、媒体として小説が向いている作品なんだと思います。

ストーリーは区切られたいくつかのお話が一冊ごとにまとめられていて(そもそも最初は単話で売っていた)、基本的には内容は一つ一つで完結して、次につながる感じです(例外もあり)。基本的な作品に対する印象は前回の記事と大きく変わっていないためそちらも参照してもらえると助かります。最新刊まで読んで大きく変わっていった点は二つです。

百合度が非常に高くなった

②裏世界(UBL)に関わる組織の存在がかなり大きくなった(規模的な意味ではない)

というところでしょうか。

前者はについてもう少し触れると、この作品は基本的に空魚の一人称視点で描かれています。そのため空魚の鳥子に対する感情は比較的透けて見えやすいのですが、一方の鳥子の内面はあまり見えないんですね。それが徐々に空魚視点でもわかるくらい鳥子の矢印が強くなっていき、今では空魚視点でもなおその強さが反転して感じられるほどです(最初の内は空魚のとりこに対する執着(性質の如何は問わない)の方が目立って見えていた)。それによって空魚の童貞力が頻繁に発揮され、まるでラブコメを読んでいるかのような錯覚を受けることすらあります。その点についてはかなりここでもお勧めしやすくなったと言えるかもしれません。

二つ目についてはかなりネタバレ要素が高いので反転しますが、そもそも鳥子が空魚を誘うために言い出した切っ掛け、「裏世界の異物が金になる」という点に対して、序盤は桜子を通して二人は金銭を得ていました。それは実は裏世界を研究している(していた)組織による購入だったわけですが、三巻以降その組織と二人との関係性がかなり密接になっていきます。特に二人と接触の多いのが汀(みぎわ)と呼ばれる男性で、この人は途中から小桜並みの出演頻度になります(茜理ちゃんより多いと思う)。金銭の授受も直接的になり、なんなら殆ど所属に近い扱いです。加えてその少し後あたりから存在感が薄れていくのが閏間冴月です。「声」の一件より鳥子や小桜の彼女に対する執着も若干薄れ、加えて鳥子の空魚矢印が異様に大きくなるため現在は少し影を潜めています。ただ個人的に閏間冴月がこのままフェードアウトするとはどうしても思えないので、いずれまた相見えることになると思っています。

そんなわけで、今回のレビュー更新による一番の重要な要素は百合度の向上でした。この作品、序盤は本当に百合度低いんですよ。それが徐々に徐々に上がっていき、いつの間にやらむしろ高い部類の作品になっていました。その代わり、もしかしたら相対的に恐怖の度合いが薄れて感じるかもしれません。私は以前の記事にも記したように非常に怖がりなのでそれでもそこそこに怖いのですが、この辺りは好みもあるので良し悪しでしょうね。このサイトで勧めやすい作品になって来たとは思いますが。

まとめ

はい、そんなわけで原作小説含めて三媒体の作品紹介でした。

久々に結構長めの記事になりましたね。どの作品も別のアプローチで楽しむことは出来ますが、やはり私のお薦めは小説(原作)です。繰り返しになりますが、この作品は小説という媒体でこそ最も輝く作品だと思います。なので是非、まだ「裏世界ピクニック」に触れたことのない方には小説から入ってもらいたい。けれどその辺り向き不向きがある事は重々承知しているので、次点としてコミカライズ版(投稿時現在、期間限定一巻無料中かつ購入でも半額期間中)、百合度に重きを置いて楽しみたい場合は一応アニメからもなくはない。そんな感じです。また原作のみ、アニメのみしか知らないという方も、是非この機会に他の媒体の作品にも触れて頂けると嬉しく思います。

それではノ

追記)コミカライズ最新刊、「果ての浜辺のリゾートナイト」あの同衾シーンの鳥子の裸身、すごかったです。あれが美しさの暴力というやつなのか・・・ありがとうございます。